2014年7月17日木曜日

映画『アンダーグラウンド』


エミール・クストリッツァ監督『アンダーグラウンド』

昨夜は'95製作エミール・クストリッツァ監督の「アンダーグラウンド」という映画を観た。
(背景やあらすじはリンク参照。いろいろ語りたいけどなるべくネタバレしないような感動だけ伝えます)

TSUTAYAで見つけて気になって借りたのだけど、すごい映画だった。

最初のほうは展開早いし騒がしいしどうしたどうした、という感じだったけど、話が進むにつれ濃いキャラの登場人物一人一人の姿や行動や、次々とひるがえる状況に目が離せなくなった。(私の「kaleidoscope」という曲は人生がすすんだり終わったりする様子を万華鏡にたとえるような歌詞になってたりするのだけど、この映画はそのイメージよりもっと激しい万華鏡みせられた!という感じ)

一つの映画にひとつふたつあれば良いくらいの「ものすごい印象的なシーン」が、この映画にはいっぱい(10個くらい)あって、どれも意味深く芸術的で忘れられなくなる。けっこう何度も「うおーうおー」ってなる。
特に朝日のシーンとラストシーンには感動でぞくぞくして目を見開いて思わず感嘆と涙が出た。
フィクションとノンフィクションの違いなどなくてもいいほどのそれは「体験」で それが人が作ったものだとは素晴らしい。
すごいことだ。

過激さや鳴り続ける音楽はシリアスになりすぎないためのユーモアで、喜びも悲しみも祝い祀るような人間讃歌になっていた。どの登場人物にも抱える問題があり、悪人の苦悩も善人の残酷さも表裏一体にそれぞれ複雑に絡み合ってラストシーンに向かう。
ひとつの事象をとってみても大小いろんな意味がついてきて、手品のように発見させられたり考えさせられたりする。心に残る。しばらく気になる。語り合いたくなる。

単なる戦争映画でもお涙頂戴でも政治的なドキュメンタリーでもない、芸術が人間や世界の姿に迫るとはどういうことか「不幸な戦争」という単純な切り口でなく、嫌味もなく、美しくやりたい放題やりながら教えてくれている。

この映画はその話だけでも書籍や演劇になって語り継がれてもよいほどの価値ある物語だと思う。でもあの場面のあの感じはあのカメラワークでしか、あの俳優でしかできないだろうな、とか、いちいち思い出しては楽しい。監督の楽しいものを作ろうという気概とまっすぐさが伝わった。

私ならあの場面はこうするなあ、音楽はこうするなあ、というのは少しはあるけど(だから完璧だとは言わないが)3時間という長さにも関わらずあまりボロも無駄もなく、とにかくものすごいものを見せられたので、まだ見てない人にも勧めたい。ふれまわりたいと思った映画でした。
3時間みてしまったら一生忘れられない映画になると思う。


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